タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

《歩くひと》特別版

こんなドラマが観たかったんだ。

9月3日にEテレで放送した《歩くひと 》特別版を録画しておいてよかった。30分×4回分を1時間に凝縮してある。

『これ、面白そう』という予感は当たっていた。

主人公はただひたすら歩く。目的も無く歩きながら何かを見つけ、感動する。それはありふれた、小波のようなささやかな感動。

ある時は地面になって空を見上げ、微かな鳥の声に耳を傾ける。ある時は唐突に現れた雄大な風景に息を呑む。

迷いこんだ場所で少し怖い目に遭っても、臆する事無く歩き続ける。

引っ越してきたばかりという以外に、説明的な事は一切無く(場所の説明すら!)、台詞も少ない。土地の人とのふれ合いも必要最小限なので、観る側はかえって想像力を掻き立てられる。

井浦新の自然な演技に好感が持てる。怒らず笑わず、誰もが一人で歩く時にはこんな表情なんだろうな。

少年のように歩き続ける夫を、おおらかに認めている奥さん(田畑智子)の、ホンワカしたムードも昭和ぽくて和む。

そう言えば、ドラマの中ではスマホも携帯も無いけれど、時代はいつなんだろう。やっぱり昭和かな?

 

NHKBS4Kで、4月から月一で放送しているらしいが、我が家のテレビは4K対応ではない。だからこのような企画は有難い。

 

原作は、谷口ジロー(1947〜2017)の漫画。

歩くひと 完全版

歩くひと 完全版

 

孤独のグルメも彼の作品。

孤独のグルメ  コミック 1-2巻セット
 

実は谷口ジローは、私の地元鳥取市の出身なので密かに応援していた。それだけに、3年前に亡くなられた時には、本当に残念だった。まだまだ表現したい世界が沢山あったのではないだろうか。

私が小学生の時に住んでいた町の周りには、商店街や小さな町工場があり、歩いていると色んなものが見つかった。

ビーズ工場の裏には、商品にならない欠けたビーズが捨ててあり、私には宝石のように思えた。印刷所の前には潰れた活字の箱が置かれていて、おじさんが「好きなだけ持って行っていいよ」と言ってくれた。街角の製材所には、かんなくずや小さな木片。路地の高い塀の下を覗くと、防護服に鉄のマスクをして溶接している人が居た。

垣間見た世界の全てが、私の宝物だった。

そんな事をふと思い出した。