タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

大晦日の惨事

あれから一週間が過ぎ、傷は癒え始めた。

 

一年で一番忙しい大晦日。息子と孫二人がやって来た。

午前中におせち料理を作り、昼食を済ませて、みんなで散歩でもしようかと高野川の亀石を渡り、喋りながら笑いながら、どこへ行くともなく歩いた。

天気は良く、春のように暖かい。

孫たちは木の実を拾い、掌に乗せて遊んでいる。道に面した庭には、花梨の重い実が揺れている。なんと穏やかな年末だろう。


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しかし、楽しい気分も束の間、事件は起きた。散歩の後、近所で買い物をした帰途、夕方4時頃だった。

 

ドンッ!!

いきなりの衝撃。

 

私が道を渡ろうとして、左から来た自転車に跳ねられてしまったのだ。

一瞬何が起きたか分からなかった。強烈な力で突き飛ばされて、そのまま幅1メートル程の歩道を横切ってビルにぶつかり、漸く止まった。

意識が飛び、数秒後に戻ってきた。お帰り。

自転車が全く見えていなかったので、何故そんな状態になったのか、自分では全く理解出来なかった。

「自転車にぶつかったんやで。大丈夫か」という夫の声で、やっと状況がのみ込めた。

自転車の人は「大丈夫ですか?」と近寄って来た。小学生の男の子を連れたお母さんだった。すみません、と謝りながら私の様子を心配げに見ている。男の子は自転車に乗ったまま、振り返ってこちらを見ていた。

『大丈夫…じゃないかも』心の中ではそう思ったが、私の不注意から起きたんだしなぁ。

色んな思いが錯綜して言葉にならず、痛みから、ただ「ウウッ」と、呻き声だけが洩れ出た。

「もういいですよ」と夫が言い、その人は再び自転車で走り去った。

「一緒に居たのに、守ってやれなくてごめんな」と夫は言うが、彼は上の孫の手を引いている。その子を置いて私を庇うなんて無理だった。息子は下の子を抱っこしていたので、彼にも無理。

「はじめから、あてにしてないから」私は少し強がった。

「アホか。何で手を突かへんのや!」と言う息子には返す言葉がない。

自分でもそう思う。何もよりによって、顔面をぶつける事はなかった。

孫たちは、恐怖にひきつった顔でこちらを見ている。かわいそうな事をした。トラウマにならねば良いが…。

買ったばかりのメガネがふっ飛んで、歩道に落ちていた。ツルが曲がっている。

それを受け取りながら、どうでもいい事を考えていた。修理するか、買い換えるか…。

「血が出てるで。押さえときや」

私はティッシュを取り出して拭いた。その時やっと、自分が怪我をしたんだと気がついた。目と眉の間が切れて、血がダラダラ流れてなかなか止まらない。温かいと思っていたけれど、冬の血はすぐに冷たくなった。

帰ってから鏡を覗くと、瞼の上に長さ2センチの傷ができていた。

目の周りから頬にかけて、コンクリートのでこぼこ模様の赤い斑点で縁取られている。こんな傷が出来て、ちゃんと治るかな。

病院はどこも休みだし、救急病院に行くほどでも無さそうだ。ちょっと様子を見るか。

顔の他は、首と膝が少し痛んだ。

転んだわけではないので、洋服はどこも破れていない。ヨシッ!

もしも傷痕が残っても、私の顔なんか誰も注視しないから、大丈夫。

 

その夜と翌朝にロキソニンを1錠ずつ飲み、全ての痛みは消えた。

元旦は特殊メイクで傷を隠すと、孫たちはやっと笑顔を向けて一緒に遊んでくれた。

 

一週間が経過して、傷はこちらから言わなければわからないほどに回復した。痕も殆ど消えかけている。

メガネは修理して、塗装の剥げた部分はあるが、ほぼ元に戻った。

 

というのが、年末年始のサイドストーリーである。頭の中は検査していないけれど、少しでも異常があれば駆け込もうと、近所の脳神経外科のある病院をチェックしてある。

今にして思えば、家族が無事で本当に良かった。

実家に帰っている妹にメールを送ると「大晦日で良かったね。これで厄は全部落ちた」という返信。

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息子が達磨寺の起き上がりこぼしを置いていった。優しいお顔に癒される。

中の空洞におみくじが入っていて、大吉だったらしい。

私にくれたのは、辛くても起き上がれという、彼なりのエールか。いや、そこまでは考えていないだろう。

 

長々と書いてしまいました。最後までお読み頂き、ありがとうございましたm(_ _)m。