タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

救急搬送 その2

前回の続きです。

ケアハウスを抜け出して頭に怪我をした母に困り果て、私はケアマネージャーさんに相談しました。

その結果、ケアマネージャーさんから、この度は大事に至らなかったものの、このままでは命に関わるような事態になりかねないので、また以前居たデイサービスの施設に戻してはどうか、と提案がありました。

 

本来は短期の入居しか許されない施設なのですが、母の場合は特例として長期間の滞在を許可して貰えるそうです。

元々母はそこにずっと居たかったのです。しかし、制度上の問題があり、仕方なくケアハウスに入居しました。

ですから、戻れるならそれが一番良いのです。私は、すぐにその申し出に同意しました。

でも、再び周りの者が勝手に決めたと、母が反発しないかしら。


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それで、再び母の元を訪れてベッドの隣に座り、ゆっくりと話をしました。

「お母さんは前の施設の方が好きなの?」

「うん、好きだ。友達がいるし、色んな所に連れていって貰える。この前はな、子供達が歌を歌ってくれて、嬉しかった」

その言葉で、何故勝手にケアハウスを出ていくのか、分かった気がしました。

母は寂しかったのです。

食事以外の時間は個室に入り、他の人との接触が殆どない施設は、自分で出歩ける人には自由で良いけれど、そうでない母には孤独で物足りなかったのでしょう。

週3回、以前の施設にデイサービスに通うだけでは満たされず、力を振り絞ってまで自力で向かおうとしたのです。

 

気付いてあげられなくて、ごめんね。

私は思わず母の丸い背中を撫でました。

部屋の外にはいつも誰かが居て、話し合え、笑い合える。設備の整ったケアハウスよりも、少人数で家族的な環境が、母には必要だったのでしょう。

 

「じゃあ、前のところに戻りたい?」

「ああ、戻りたい。ずっとあそこで暮らしたい」

「だったら、そうしようか。頼んであげるよ」

「そうしてくれるか」母の表情はぱっと明るくなりました。

戻ることは既に決まっていたのですが、母が自分の意思で決めたのだと思う方がいいと判断しました。

明日からまた荷物運びで大変です。でも、最初の腹立たしさはすっかり消えて、心は軽くなった気がしています。
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