タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

雨の日の通院

ゴールデンウィークが始まる直前、母が「歯茎が痛くて食べ物が食べられない」と言っていたのが気になっていました。
歯医者さんは当分お休みだし、薬でも買って来ようかなと思っていた矢先、補聴器ケースに奥歯の被せものを発見しました。
あら〜。奥歯、外れちゃったんだ。
なんで隠してるんだろう。訊いても答えてくれないから訊かないけど。

入れ歯の支えになっている歯だから、放っておいたら大変な事態を招きかねません。

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休み明け早々「これから伺ってもいいですか?」と歯医者さんに電話を入れました。
事情を話すと、すぐに来て下さいという事でしたから「行きたくな〜い」と子供のようにごねる母を急かせて、タクシーを呼びました。

折悪しく雨。
いつものバッグに加え、傘とレインコート、それに母のシルバーカー、と大荷物です。
その上母の歩みは遅くて、タクシーを降りてから、丸い背中を押すようにして歯医者さんに入りました。

本来なら被せものが外れた歯は治療して作り直すか、そうでなければ抜くべきなのですが、担当の先生は「入れ歯に、外れた歯の分を補填しますから、歯自体の治療はせずにこのまま置いておきましょう」と言われました。
色んなリスクを考慮すると、それがベストという事でした。

何故なら、母は現在整形外科で『ボンビバ』という骨粗鬆症の治療薬を使っていて、その薬の副作用で、歯の治療や抜歯をすると顎の骨の再生が出来ず、炎症が酷くなる可能性があるからです。
場合によっては、顎の骨が溶けてしまう危険もあります。
そんなリスクを冒してまで、治療は出来ないのです。

治療後に、毎食後きちんと歯磨きをするように指導を受けましたが、それは至難の技です。また仕事が増えちゃったな。

母は、治療せずに済んだ上に、入れ歯が調子よくなったと喜んでいましたが、私は憂鬱な気分で雨空を見上げました。

その時、鞄屋さんの看板が目に留まりました。
もうすぐ母の日か…。
母はまともな財布を持っていません。
端っこが破れていたり、古くて革が固くなっていたり、小さすぎてお札がはみ出したり、そんなのばかり。

「財布を買おうよ。どんなのがいい?」
「軽いのがいいなぁ」
柔らかくて軽い革の財布を幾つか出してもらい、その中から母は好きな黄色を選びました。

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横の5円玉は、お店の方が「お金にご縁がありますように」と入れて下さったもの。「私の母も同じような感じなんですよ」と言いながら。

家に帰ってからちょっと早いけど「お母さんありがとう!」とカードと一緒に財布を渡しました。
「いいよ〜。お金は払うよ〜」
迷惑そうな顔で言います。実はプライドが高く借りを作るのが嫌いな母は、昔からプレゼントを貰うのが苦手なのです。
「こんな時ぐらい、ありがとうと言って受け取るもんだよ」
そんなやり取りの後で、千円札と小銭を幾らか入れて、デイサービスに持って行くリュックに入れておきました。
母はそれを満更でもなさそうな顔で、じっと見ていました。
ホントに、素直じゃないんだから。

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散歩道に、おいしそうなさくらんぼ。3月京都へ帰る私を、見送ってくれた桜の木です。