タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

母の居場所 その2・私だって風邪を引く

介護生活を続けていると、自分自身の健康はなおざりになりがちです。
母の不調には敏感で、大事にならないうちに病院に連れて行くのに、自分の事となると少々の痛みや不調は我慢。実際問題として、病院に行く余裕すらありません。

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大抵は数日経つと治ってしまうので、私は体力があるから大丈夫、みたいに思っていました。
でも、今回は参りました。
体が熱い、だるい、頭が痛い…これは完全に風邪です。でも母の世話があるので、病院には行かず持参していた風邪薬を飲み続けました。
お昼ご飯を食べ終わると布団にもぐり込み、夕方になると這い出して夕食を作る、という生活を5日間続けました。

この間、母は寝ている私の様子をチラッと見ると、危険を感じたのか、すぐに自室に入ってしまいました。
その為か母に私の風邪がうつることはありませんでしたが「大丈夫?」も「熱があるの?」も「薬飲んでるの?」もなく、全くの無言でした。そんな優しさも忘れてしまったのかしら、と寂しい気持ちになりました。
そう言えば「ありがとう」も、1回も言ってくれてないな〜。

熱は下がり大分楽になりましたが、まだだるさが抜けなかったので、デイサービスの施設に連絡してしばらく母のショートステイをお願いしました。
急でしたが、丁度空室があったので、すぐに母を迎えに来て貰えました。
初めてのショートステイに、「泊まるなんて嫌だ」と言っていた母ですが、迎えの車が来たら抵抗なく乗って私に手を降ってくれたので、ほっとしました。

私はすぐに病院に行って薬を処方して貰いました。母の事を気にせずにグッスリ眠れたからでしょうか。翌日にはほぼ回復していました。

ショートステイは1週間でしたので、母が帰って来る日にはすっかり良くなって、スッキリしていました。

しかし、母にはショートステイのことで、きっと文句を言われるに違いない、と覚悟していました。
『嫌だって言ったのに無理矢理行かせて、あんたはなんて冷たい娘なの!』なんて、怒りをぶつけてきたらどうしよう…。

帰って来た母はやっぱり怒っていました。
でも理由は全く違います。

母の第一声は「なんで帰って来なくっちゃいけないのよ!折角楽しく暮らしていたのにっ!」でした。

母の言い分はこうです。
《職員さんはみんな優しくてゆっくり話を聞いて貰え、利用者の方の友達も出来た。新しい施設は綺麗で安全。ベッドは寝心地が良く食事は美味しい。あんな快適な暮らしはないのに、なぜ帰らなくてはいけないのか》
そう言って、プンプン怒るのです。

エ〜〜〜〜〜ッ?

行く前とはエライ違いやん。

大どんでん返し!

母の頭にあった施設への偏見は、今回のショートステイですっかり消え去ったようです。
その上、また行きたい、今度は永住したいなどと言い出したのです。

そして私は思いました。
私のすべき事は一体何だろう。
この不便な家で、母も私も不満を抱きながら、それでも寄り添って暮らしていく事なのだろうか。
それより、快適な暮らしが出来る場所を探して、母に提供してあげる事なのではないのだろうか。

私も妹も、出口の見えない介護生活に疲れが見え始めています。
夫は何も文句を言いませんが、仕事が終わってから買い物をしたり料理をするのは、きっと大変だと思います。
それに、以前より大分痩せてしまったみたい。
このままでは周りからバタバタ倒れてしまうかも知れない、というのが今の一番の心配事です。

そして、母が施設を好きになってくれたのは、次のステップへの良い機会のような気がしています。

老いた母が安心して暮らせる場所は、少なくとも、長年住んでいた家ではなさそうですから。

それから数日後、母が熱心に新聞の広告ページを眺めていました。
やがてそのページだけを外して丁寧にたたむと、大切そうに別の場所に置きました。
私は何が書かれていたのか気になって、後で開いてみました。
読んだ途端、胸が詰まりました。


母の心を打ったこの言葉に、私はただ涙でした。