タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

母の居場所 その1・ある事件

今回の実家滞在中は大変な事が多くて、一人で介護を担うのは無理かも知れない、と思い始めました。

急に喘息になったり体が動かなくなったりといった小さな事件は、毎日のように起きます。
その度にタクシーを呼んで病院に連れて行くのですが、母は翌日にはケロッとして「そんな事があったの?嘘でしょ」と言うのです。
それは日常茶飯事なので、私も「へ〜、忘れちゃったんだ〜」と軽く受け流すようにしています。

しかし、とうとう大事件と言えるような事が起きてしまったのです。

2月半ば、雪が降ってとても寒い日でした。
いつものように私が先にお風呂に入り、次に母が入るのを見届けてから、居間でテレビを観ていました。
母はいつも30分位で上がって、自分で寝仕度をします。
好きな連ドラを観終わって、そろそろ寝ようかなと思っている時に、突然電話のベルが鳴りました。

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時間は9時過ぎ。そんな時間に掛かって来る事はあまり無いので、少し嫌な予感がしました。
恐る恐る受話器を上げると「給湯のガスが長時間つけっぱなしになっているという情報が入っていますが、何か異常ありませんか」という、ガスの会社からのものでした。

母はとっくにお風呂から上がっていると思い込んでいた私は「多分、さっきまでお風呂を使っていたからでしょう」と、呑気に応じました。
相手の方は「そうですか。それなら結構ですが、念のために点検をお願いします」と言って電話は切れました。

おかしいな、何だろう…。
言われた通り、点検のためにお風呂場に行くと、ザーザー音がしています。お母さん、まだ中に居るんだ!
スーッと血の気が引き、慌てて戸を開けました。

そこには、もうもうと湯気の立つ中、すのこの上にペタンと座ったままでお湯を流している母の姿…。
「えっ、どうしたの?何があったの?」驚く私に「ちょっと転んじゃってね。痛くて湯船に入れないから、お湯を出して掛けてたの」
私は混乱しながらお湯を止め、母を抱えて湯船に入れました。

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ドキドキしながら私は立ち尽くし、母を見詰めていました。
時間を置いて温もった頃に抱え上げようとすると「一人で出来るわよっ!」と、母は自分で湯船から出て体を洗い、何事も無かったような顔をしてお風呂場から出ました。
転んで動けなかったと言うのが信じられない程に、それは普通の態度でした。
呆気に取られる私…。

母がお風呂に入ったのが8時頃、そして電話があったのが9時。1時間も母はお風呂場でお湯を掛け続けたのでしょうか。
もしもあの電話が無ければ、母はどうなっていたのか…想像しただけでゾッとします。
異常を報せて下さったガス会社の方には、本当に感謝しかありません。

もう一つ運が良かったのは、いつもフック状の内鍵を掛けて入浴する母が、この日はたまたま鍵を掛けていなかった事です。
「何かあったら困るから、鍵を掛けないで」と言っても「鍵を掛けんと寒い」と譲らなかった母。
でもこれを機に、鍵は取り外してしまいました。
当然ですよね。
もしも鍵が下りていたら、ガラスを割るしかなかったのですから。

しかし数日後、この話を母はすっかり忘れていて「あら、そんなことがあったの?全然覚えてないわ〜」と言うばかりです。

この一件は私の不注意から起きました。
昨日まで大丈夫だったんだから今日も大丈夫、なんていう考えは、介護には通用しないのです。
それを思い知らされる出来事でした。

改めて眺めると、築35年の実家のお風呂場は危険だらけ。
湯船は深くて縁が高いので、老人がまたぐのは大変です。
床と壁はタイル張りで天井が高く、幾らお湯を沸かしても浴室全体を温める事は出来ません。
脱衣場に暖房はあるのですが、母は肌が乾燥するからと勝手に停めてしまいます。

これ以上、母をこんなに危険なお風呂に入らせるわけにはいかない!
悩んだ末に、通っているデイサービスの施設にお願いする事に決めました。

それ以来、母は週2回そちらでお風呂に入っています。
「施設のお風呂は暖かいし、ヘルパーさんがずっとついていて安心できる」と、気に入っているようです。
時々「今日は面倒くさい」と言って断る事はありますが…。