タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

赦し

こんな日もあるのだなぁと、不思議なくらいに暖かな冬の一日。
母がそそくさと外出の身仕度を始めました。
二日前にアマゾンからシルバーカートが届いたのですが、寒くて使う機会がなく、「お天気がいい日にこれで散歩しようね」と言ったのを、今日こそチャンスだと思ったのでしょう。
 
シルバーカートはいかにも老人臭くていやだ、と母は拒否し続けていたので、彼女に相談せず私がネットで注文したのです。せめて近所ぐらいは一人で外出して、自信をつけて欲しいという思いから、少々強引でしたが買ってしまいました。プライドを傷つけないように、「これ、私も重いものを運ぶ時に使うから、置かせてね」と理由をつけて。
ですから、運搬にも使えるシンプルなデザインのものを選びました。
「あなたも使うんなら、まあ…仕方ないね」
カートを見ながら、しぶしぶという感じで母は承知してくれました。
ですから、まさかそんなに散歩を楽しみにしていたなんて、思いもよらなかったのです。
 
「どこへ行こうか?」私が支度するのを待ちかねてソワソワしている母に尋ねると、
「池に行きたい!」即座に返事が返ってきました。
お昼時だったので、コンビニでおにぎりと暖かい飲み物を買い、ちょっとしたピクニックです。

 

歩き始めると、母は池までの道筋をうんと遠回りしようとします。カート、気に入ってくれてよかった。
「そっちは遠いから、普通に最短距離を行こうよ」
という私を尻目に、どんどんカートを押して行きます。どうやら、知り合いの家の前を通りたいらしいのです。母の目は、好奇心で輝いています。
私の知らない坂道や村の中を通り抜けながら、「ここは〇〇さんの家だけど、長い間会っていないのよね」なんて言っています。
本当は私の手を借りないで、自分で歩きたかったんだね‥‥‥。
 
よその番犬に吠えられた!
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 そんな母の丸い背中を見ながら、『色々あったけど、私は一度もこの人を嫌いになったことがなかったなぁ』と思うと、急に涙が零れそうになりました。
 
やっと池に到着し、公園を散歩してからあずまやのベンチでお昼ごはん。
海苔を巻いたおにぎりを差し出すと、母は「あなたが優しい子になってくれてよかった」と呟くように言いました。
「えっ?」
「私は厳しい母親だったのに…」
 
池面は凪いで鏡のようです
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私は幸せ者です。こんなにうららかな日に、美しい景色の中でこんな言葉が聞けたのですから。私は決して優しい人間ではないけれど、母に褒められるのは嬉しい。
「もういいよ。そんな事、今更言わなくても」
謝ろうとする母にそう言って、おにぎりを口いっぱい頬張って立ち上がりました。
また、涙が出そうになりました。
 
いつ来てもここの景色は雄大で、心がゆったりと大らかになります
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足下に小さな花           
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この一日は、天からのプレゼントでしょうか。
これからもずっと、キラキラした思い出を拾い集めながら、小さなお家を作り続けていこうと思います。