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タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

バイブルのようにこの本を読む

日記

子供の頃から本好きでしたので、随分沢山本を読んできました。

学生の頃の愛読書は大江健三郎安部公房倉橋由美子

いわゆるフランス文学系、と言われる作家の作品です。

新刊が出た途端に買いに走りました。

主人公のアブノーマルな行き方や孤独感が心に響き、沈み込むように閉塞的な世界にのめり込みました。

翻訳調の難解な、歯応えのある文体も気に入っていました。

読後に押し寄せる感動の波は、なお一層私を孤独の世界に引きずり込んでいきました。

決して嫌なものではなく、それがむしろ快かったのです。

しかしそれは、私が幸せな状態に置かれていたからかも知れません。

 

 私の場合、本当に不幸な状況に陥ると、活字を受け付けなくなるのです。

それを経験したのは、30歳の頃。夫が突然フリーで仕事を始め、来客が多く自由のない暮らしになかなか慣れることができず、心も体も疲れ果てていました。

経済的にも行き詰まり、やっていけるのかどうか、不安が募ります。

本も新聞も、ただ目が字面を追うだけで内容は全く頭に入ってきません。

そんな状態が数か月続きました。

何となく体がだるい、頭が重い、何もやる気が起きない・・・今から思うと鬱だったのでしょう。精神はどんどん暗い方向へ向かいました。

将来に希望が持てず、一日の仕事をこなすのに精一杯で、体はクタクタなのに殆ど眠れない日が続きました。

 

そんな時、手に取ったのがこのシリーズ3冊でした。

近所の小学生の男の子が「この本、あげる」と置いて行ったもの。

母親に、中学受験に集中する為漫画を捨てるように言われ、どうしてもこの本を捨てられなくて私の所に持って来たのです。

以前からよく遊びに来て「今日の塾は辛かった」とか、「学校で嫌なことがあった」とか、おやつを食べながら愚痴をこぼして行く子です。

私の家に置いておけば、読みに来ることができる、と謀ったのでしょう。

その気持、分からなくもありません。

実際時々来てはクスクス笑いながらその本を読み、満足したように帰って行きました。

その本は、中学生になると同時に男の子が引っ越してからも、本棚の片隅に置かれていましたが、子供向けギャグコミックなので、私が読むことはありませんでした。

しかし眠れない夜、笑いながらこの本を読んでいた男の子を思い出して、何気なく頁を捲ってみました。

まさか、その本が私を救ってくれるとも思わずに・・・。

燃える!お兄さん 全19巻完結 [マーケットプレイス コミックセット]

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幼い頃川に流されて 、家族と離れ離れになったケンイチ君が主人公です。

彼は空手家に拾われて山で野生児として育ち、やがて家族と再会して東京で暮らし始めます。

勉強は全く出来ないけれど、実にのびのびと楽しげに逆境を乗り切っていくのです。

本人は天然なので、大変な状況にも気付かないのですが・・・。

真夜中に、読みながら大笑い。その夜はぐっすりと寝られました。

それからは、毎晩この本を読んで眠りに就きました。

そのうち、いつの間にか私も環境に慣れて、普通に暮らせるようになったのです。

ケンイチ君や周りの人達は、心から笑うことの大切さや生きるためのしなやかさを教えてくれました。そういう意味では、この本は私にとってバイブルなのです。

主人公と同じ名前のあの子、今はどんな青年になっているのでしょう・・・。