タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

優しい毒・・・ナンシー関という生き方

「じゃ、またね」

と別れてから暫くして、相手の訃報が届くという事を、今まで数回経験しました。覚悟のない別れは、大きな痛みと悲しみを伴います。

ナンシー関の死もそんな感じでした。ずっとそこに居てくれると思い込んでいた人に、突然逝かれてしまったような、そんな・・・。

 

このところ、彼女の本を立て続けに読んでいます。

去年の暮れ、『ナンシー関のいた17年』というドラマを観て早速図書館に予約した本が、今頃になってドドドッと到着したからです。

ドラマにはフィクションの部分があり、全てが事実だとは言えないのでしょうが、彼女の生き様は十分伝わって来ました。

自分の後ろにもう一人の自分が居て、次第に形を成していく消しゴム版画を眺めている。そして、出来上がった瞬間、「さあ、次行ってみよう」とニヤリと笑う、そんな感じを受けました。

的確に対象物を捉え、舌鋒鋭く斬りまくる。

しかし、それは彼女の愛情の裏返し。消しゴム版画も文章も、まず「好き」から始まっているように思えてなりません。

今読んでいる『ナンシー関 リターンズ』に、彼女の父親は特殊な技能を身に付けた人を集めた村で育ち、米粒彫刻家の継承者になるのがいやで、母国を捨て日本に密航したプエルトリコ系の中国人だという記述がありました。へー、そうなんだ。でも米粒に彫刻して、中国では食べていけるの?本当かなぁ・・・。

彼女一流のジョークでデフォルメされているであろうと、少々眉唾もので読んでいます。 

ナンシー関 リターンズ Nancy Seki Returns

ナンシー関 リターンズ Nancy Seki Returns

 

 しかしこの本に書かれている事を信用すると、俄然彼女の生き方がドラマティックになってきます。ただ好きでやっているつもりが、実はご先祖様から受け継いだ血に操られていたなんて・・・。

 

彼女の消しゴム版画やエッセイに触れるにつれ、ジギタリスという植物を思い浮かべてしまいます。

この植物、大量に摂取すると危険なのですが、少量ずつ服用すれば、強心・利尿の効果があります。彼女のパンチの効いた一言は、まさにその、毒にも薬にもなりうるジギタリスそのものだと思えるのです。

                  ジギタリス(和名:キツネノテブクロ)

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           植物園へようこそ! より画像をお借りしました

消しゴム版画というマイナーな領域を芸術にまで押し上げ、それに洗練された言葉を添えて、見る人をあっと言わせる。ターゲットにされた人も、ついついフフフと笑ってしまう、そんなユーモアに満ちた作品の数は実に膨大。 

ナンシー関 消しゴム版画

ナンシー関 消しゴム版画

 

この本を図書館から借りて帰りながら、その重さに少し後悔しました。いや、この重みは彼女の人生そのもの。彼女の歩みがこの一冊にギュッと詰まっているのです。

今テレビで活躍しているタレント達を彼女が見たら、どんな作品に創り上げるのか。それとも「あんたたちは対象外」と一蹴するのか、彼女に訊いてみたい気がします。