タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

受付で帰る人(歯の話 no.2)

前回、『大掃除の時に歯が痛み出してから、歯医者さんを探した』と書きました。

でも、優秀な歯医者さんは痛くない時に探すに越したことはありません。その訳は、患者の事を真剣に考えている歯医者さんほど、土台である歯茎の治療から始めるものだからなのです。ですから、本格的に歯を治療するまでに時間がかかり、その間歯の痛みを我慢しなくてはならない可能性があるのです。

この方法は一見遠回りのように思われますが、実はとても大切なのです。簡単に言えば、土台がしっかりしていないと、乗っかる歯もしっかりする筈はありませんから。

今日のタイトルでもある《受付で帰る人》を、目撃した事があります。

「歯が痛くなったので治療して下さい」とやって来る患者さんに、「当院では悪い歯全てを治して頂く方針ですが、よろしいですか?」と応対する受付の人。

「じゃあ、結構です」とその患者さんは帰ってしまいました。

その気持ち、わかります。歯の痛みって我慢の限界を超えていますからね。それなのに、すぐに治療して貰えないとなれば、何て冷酷な歯医者さんだろうと思って当然です。私だって、鎮痛剤で痛みが引いていなければ、帰っていたかも知れません。

でもそうしなくてよかったと、今は心から思っています。

 

私が今の歯医者さんに通うまで受けていた治療は、痛む歯や被せ物が外れてしまった歯だけを治す、というものでした。でもまたすぐに虫歯が出来て、通院の繰り返し。《積極的に検診を受けているし、歯磨きも丁寧にしている。そして、少しでも悪くなったら早いうちに治療している。でも一向に良くならないのは何故なの…?》と暗澹とした気持ちになったりしました。

 

今の歯医者さんに出会ったのは、そんな事を考えていた時期でした。これは私にとってラッキーだったと言えます。再治療を必要としない歯にするというのが、院長先生の方針で、それこそが私の求めていたものだったからです。

最初の治療の日、繰り返す虫歯の原因は、口中のバイオフィルム(細菌の塊)の仕業なのだと、歯科衛生士さんが説明して下さいました。不完全な治療や歯周病によってバイオフィルムが出来、それは血管を通って全身に回り、やがて障害を引き起こして様々な病気の原因になるという事を、絵本のようなものをめくりながら、わかり易く教えて貰い、それはストンと私の胸に収まりました。目から鱗が落ちた瞬間です。

虫歯を放置しておくと心臓に影響を及ぼす、という事は以前から知っていましたが、それ以外にも大きな病気になるのだと、その時初めて知ったのでした。

そして、治療の説明を受けました。

それは、①まず歯茎の治療をして②古い被せ物や詰め物を外し③神経の治療を完全に施して④除菌を行うというもの。⑤歯の治療はそれからやっと始まるのです。

その時私は『今までの悩みを断ち切るには、この方法しか無い』と思い、この医院での治療を決めました。

そうなれば当然、長い通院期間や、高額の費用も必要となります。私は大いに迷い、気持ちはぐらつきました。でも『何回も治した末に歯を失いかねない治療よりは、一回で完全に治すほうがずっと得やん!』と天の声が聞こえてきました。その時、心の天秤は《ここで治療する》という方に大きく傾いたのです。《よし、一旦そう決めたからには、とことん治療して頂こう!》そう決心すると、もう心は揺らぎませんでした。

 

話が前後しますが、予約を入れて初めて行った日は、問診と検査、そして大まかな治療方針を聞いただけでした。

問診は個室でコーディネーターの女性との対面式で行われ、あらかじめ書き込んだ問診票と照らし合わせながらの丁寧なものでした。時間は20分ぐらいだったと記憶しています。

その内容は歯と歯茎の状態や、生活習慣などですが、コーディネーターさんがそれを書き込み、問診票の空白は小さな文字でギッシリと埋められていきました。

不思議な事に、問われるままに歯に関する悩みを話していくと、心が次第に軽くなっていくのを感じ、随分沢山の重荷を心に抱えていたのだなぁと、自分自身驚きました。

最後に「では、(歯に関して)これからどういう感じになりたいとお思いですか?」と尋ねられ、私は「きちんと噛んで、喋って、それに、笑顔の写真を撮りたいです」と答えました。

歯が丈夫な方には理解出来ないと思いますが、歯に悩みを抱えていると、うまく噛めないのは勿論、口を開く事自体が恐怖なのです。それは自信の無さに繋がり、どんどん消極的な生き方になってしまいます。

そんな生き方はもう絶対にしたくない!

問診が終わると、そんな気持ちが強くなりました。

「もしも治療にご不満や変更して欲しい事があれば、遠慮無く私にお電話下さいね」

そう言って彼女は私に名刺を手渡しました。先生に直接言えなくても、この人に言えば変えてもらえるんだ、と私は心強く思ったのでした。

             

               次回に続く