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タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

メジロ奮闘記 

パソコンに溜まった画像を整理していたら、『メジロ日記』というフォルダが出てきました。 

こんな事があったなぁと懐かしく、時期外れではありますが、紛れ込んで忘れてしまわないうちにアップしておきます。

          ■  ■  ■

それは、3年前のこどもの日でした。

やっと花粉症の季節が終わって症状が出なくなった私は、そろそろ庭掃除でもしようかと、剪定バサミで伸びすぎた庭木の枝を切り始めました。ジャングルのように茂った南天の木を、大胆にバサバサ切っていた時、な・・・なんと、そこに鳥の巣を発見したのです。はじめはゴミだと思い捨てようとしていましたが、捨てなくてよかった!    

 そう言えば、枝を切っている時に、メジロが二羽ピピピと鳴きながら飛び交っていました。えらく人馴れしたメジロやな~と呑気に構えていましたが、あれは私を警戒していたのだ、と遅ればせながら気付いたのです。

恐る恐る巣を引き寄せて中を確認すると・・・あらま、小さな卵が5個。

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            ( 2011年5月5日撮影 )

どこから集めたのか、荷造り用のビニールテープを細く裂いたもので外側を造り、中は小さな木の枝を編んだような構造。人工と自然が見事に調和した、美しい近代建築です。

ごめんなさい。知らない事とは言いながら、巣に被さっていた枝をバッサリ切ってしまった!ご両親がお怒りになるのもご尤もです。

しかし、こうなったからには、私がこの子たちを天敵から守るのだ!と固い決心をし、時々窓ガラス越しに親鳥が卵をあたためているのを見て「今日も卵ちゃん元気そう」と、胸を撫で下ろす日々が続きました。

ところが、ある日事件が起こりました。カラスも蛇も近寄らなかったというのに、思わぬところに伏兵が…。

ご近所で、防虫の為に庭木に殺虫剤を散布するそうなのです。それも、メジロの巣に隣接した場所で…。知ったのは散布の前日でした。

あら、どうしよう…。

まだ孵化していない卵の状態なら、殻に守られているから、多分大丈夫でしょう。けれど、もしヒナが孵っていたらどうなるのでしょう。殺虫剤がかかって死んでしまうのでは…?

とにかく、どういう状態なのか、そっと巣を覗いてみました。

え~~~っ。

居たのですよ。まだ目も開かず、羽根も生えていない、フニャフニャで無防備な状態のヒナが…。お腹がいっぱいなのか、ぐっすり眠っています。ちょっと不気味。

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                   ( 2011年5月14日撮影 )

でも、ポワンと生えている頭の白い産毛が、おじいさんっぽくてかわいい。こういうの、キモカワっていうのかしらねぇ。思わず頬が緩みます。

でも、のんびりしている場合じゃないのです。何とかしなくては…。

閃いたのは、こんな方法でした。 透明のビニールシートを被せて、簡単に外せるように洗濯ピンチで木に止めてあります。これなら親鳥も外から巣の様子が見られて、少しは安心出来るでしょう。

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親鳥は心配そうに取り付けを見守っていましたが、やがて落ち着いたと分かるとビニールシートの下をくぐって、せっせと青虫などの餌を運び始めました。

翌朝、私は消毒を始めようとする作業員の方に、事情を話してシートには絶対薬剤をかけないようにお願いし、家の中で作業を見ていました。親鳥は、離れた場所で巣を見ているようでした。

作業は数分で終わりました。幸いシートに薬剤はかかっていないようでしたが、風に乗って巣の中に流れ込んでいるかも知れません。私は最悪の事態を想像して、とても不安でした。

ドキドキしながらそーっとシートを外してみると・・・あっ、生きている!ヒナたちはみんな元気そうです。

 木が揺れるのを感じて、親鳥が帰って来たと勘違いしたらしく、思いっきり首を伸ばして大きな口を開け、餌をねだっています。声は出ないようです。

ぼやけているのは、まだ体がしっかりせず、絶えず体を揺すっているから。「ごめんねー、餌じゃないのよ」私はほっとして体の力が抜けるのを感じました。

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                                           ( 2011年5月15日撮影 )

そして、再びメジロ一家の平穏な生活が始まりました。大雨の日、どうしているかな、と観察していますと、親鳥は、自分は濡れながらも羽の下にヒナを庇い、巣にじっとして居ました。小降りになると、交代で飛んで行ってはせっせと餌を運んで来ます。

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             ( 2011年5月20日撮影 )

親鳥のがんばりのお陰で、ヒナはすくすく成長。まだメジロの象徴、目の周りの白いくまどりは無いものの、深緑色のふんわりした羽根が生え揃っています。

「エライねー。あんたたちは親の鏡だねー」私は心の中でそう呟いたのでした。

事件から9日後の、朝から小雨がしとしと降る日。

ヒナが巣から他の木の枝へ飛び移る訓練をしていました。羽根が空気を含んでいるので、親鳥より大きく見えます。

邪魔をしてはいけないと、私は知らん振りを決め込んでいました。

「そろそろ巣立ちかしら。でも雨が降っているから、今日は訓練だけでしょうね。きっと晴れた日に巣立っていくんだわ」と思っていました。

しかし、それは勝手な思い込みでした。

あれほど賑やかに聞こえていた鳴き声が、急にシン…と止み、庭は静まり返りました。いつもなら親鳥が餌を運んでいる筈の巣にも、全く気配が感じられません。

そう、彼らは飛び去って行ったのです。覗いた巣の中は空っぽ。 

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              ( 2011年5月24日撮影 )

『立つ鳥跡を濁さず』の言葉通り、巣は掃除されたみたいに清潔でした。 

最後まであっぱれで清々しいメジロさんたち。ちょっと手は掛かったけれど、また来てくれないかしら、と毎年5月になると夢見ています。

どうやら、彼らはスリル満点の我が庭での生活に懲りたようで、あれ以来巣は造ってくれません。

でも、時々庭にやって来て木の実をついばんでいるメジロは、あの子たちかも…と思うと幸せな気分になるのです。