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タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

QEDシリーズ 目からウロコの歴史解釈

日記

QEDはミステリーであり、残虐な殺人事件と推理がメインですが、それに絡む歴史の面白さも味わえるという魅力があります。シリーズを通して、薬剤師で探偵役、桑原崇の薀蓄には驚かされます。歴史上の人物の深い部分に触れ、今まで知らなかった歴史の裏側を知ることが出来て、目から鱗が落ちる思いでした。 

QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

 

  一例をあげますと、奈良にかかる枕詞『あをによし』の『あをに』とは、奈良の都に生える苔の色だと私は学校(確か中学)で教わりました。

しかし、QEDの中の記述によりますと、『あを=青』は鉄、『に=丹(赤)』は水銀を表すのだそうです。

水銀が何故赤なの?銀色ではないの?と思ったのですが、調べてみて納得できました。水銀は硫黄と化合して硫化水銀(辰砂)となり、宝石のような赤い結晶を形成します。

辰砂 cinnabar (紅の沢)

こちらは鉄の結晶です。

鉄 - 結晶美術館

古代、鉄は武器を作るのに重要な材料であり、鉄を生産する者は、鉄製の武器を使って戦に勝ち、権勢をふるう事ができたのです。

でも、何故水銀が重要なの?とはじめは思ったのですが、自然界の鉄を完全な鉄にするには、当時は大量の水銀を必要としたようです。

鉄に関するもう一つの例をあげます。

以前私は、日本を表す『瑞穂の国』という言葉から、黄金色の稲が重たげに穂を垂れる水田のある、豊かな国を連想していました。

でも、正確には『葦原の瑞穂の国』なんですよね。何故、葦の原にお米が実るのか、あらためて考えると首をひねりたくなります。

しかし、元々『瑞穂』が『葦の穂』を表していると考えると、不思議でも何でもありません。実は、葦という植物は、バクテリアの影響により、根に鉄を溜め込む性質があるそうなのです。そうなるまでは十年以上かかるそうですが…。

葦が沢山生えていれば、鉄が豊富にあり、繁栄している土地という訳なのです。

製鉄に使われる鉄は主に二種類あり、一つは先程述べた葦から採取するスズ鉄というもの。スズ鉄のまわりは空洞になっていて、振ると音がしたそうで、『鈴』はそこからきています。そしてもう一つは砂の中にある、砂鉄と呼ばれるものです。

突然ですが、ここでスサノオが登場します。

スサノオの『スサ』は『州砂』とも表記しますが、これは砂鉄を意味します。スサノオ=州砂の王=鉄の王だという説が、本の中で述べられています。彼が鉄の王だとしたら、スサノオヤマタノオロチとの戦いに勝って出雲を治めたという壮大な物語は、単なる想像の産物とも思えなくなります。

何故なら、出雲地方で盛んだった『たたら製鉄』という鉄の製造方法は、鉄が出来上がるまでに8つの工程を踏まなくてはならないのです。この『8』という数字、頭が8つあったヤマタノオロチと共通しています。

つまりこの物語は、他の地からやって来たスサノオが、鉄を造り出雲を統治していた先住民と戦って勝利し、出雲の権力者になったという話を、面白く作り変えたのではないか、と主人公崇は言います。

なんとスッキリする解釈ではありませんか。 

QED 伊勢の曙光 (講談社文庫)

QED 伊勢の曙光 (講談社文庫)

 

その他にも、 神話の中にしか存在しないと思っていた、アマテラスやオオクニヌシの正体に言及していたり、熊野三山について詳しく説明していたり・・・それらを読んでいるうちに、崇の友人たち同様「えっ、そうだったのかぁ」と驚き、自分が歴史に関していかに認識不足だったかったのかを自覚しました。

QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社文庫)

QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社文庫)

 

 シリーズは終わってしまいましたが、全巻を読む前と読んだ後とでは、私の歴史観は全く変わりました。読後、それまでは人形のように思えた歴史上の人物が、意思を持つ血の通った人間として、生き生きと動き出したのですから。