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タテハ通信

好きな物があればあるほど人生は楽しい。そんな私の日常を綴っています。

安部公房

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

安部公房の没後20年という記事を読んだ時、彼の小説、特に長編小説に傾倒していた学生時代を思い出した。確か、フランス文学系という名称だったと思うが、彼と大江健三郎、そして倉橋由美子の作品はそんな分類をされていたように覚えている。

私は何故かこれら三人の作家の作品が気に入り、読み漁った。当時の虚無的な、あるいは抱えきれない不安に苛まれる私の心境に、一番ぴったりしていたからかも知れない。

最初に読んだのが『砂の女』だった。砂丘のある地方都市に育った私は、ここに描かれるざらりとした砂の感覚になじみがあった。特殊な世界が描かれている筈なのに、とても身近に感じたものだ。

主人公の内面さえも、私には経験があるような気すらした。この結末は納得いかないなあ、と思いながらも、どこかで自分も多分こういう選択をするだろう、と漠然と感じていた。理不尽さを受け入れ、自分の物にしてしまうというか…。

砂の女 特別版 [DVD]

砂の女 特別版 [DVD]

DVDも出ている。岸田今日子さんがどこか投げやりな、それでいて生命感と性的魅力の溢れる女性を好演している。

他人の顔 (新潮文庫)

他人の顔 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

壁 (新潮文庫)

他にもこんな作品が印象に残っている。いずれも特殊な世界でありながら、こんな事も起こりうるかも知れない、という感覚を抱く。そして、いつしか主人公と同化している自分を感じる。

彼の名前や作品のタイトルを聞いただけで、懐かしく、胸を締め付けられる思い。